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「おい、お前来週からリヴァイ兵長の下につけ」いつものように調査兵団で雑務を熟していたら、突然後ろから声が掛かった。あまりに突然のことだった為、「えっ?」と上官に向かい情けない声を出してしまった。上官は顔を歪めながらも今後の任務について説明を始めた。説明はほんの数分で終わって上官は去って行ったが、私はまだ現状把握が出来ずその場に立ち尽くしていた。何故ならその任務は、新兵で『巨人の力』を持つエレン・イェーガーの監視と護衛の為結成されたリヴァイ兵長率いる調査兵団特別作戦班(後に通称・リヴァイ班)のメンバーに私ペトラ・ラルが指名されたのだと言う。私にとってリヴァイ兵長は『憧れの人』でもあり、私の好きな人。そんなリヴァイ兵長の下任務が出来るなんて夢の様な話だ。
彼のことを知ったのは調査兵団に所属して初の壁外調査の時だった。兵士なって初の壁外での任務だった為いつも以上に気合とやる気はあった。実際に巨人を目にするまでは。訓練兵の時巨人に似せた模型で戦闘訓練はしていたけれど、実際に見て戦闘するのではあまりにも違った。その場には同じく新兵であるオルオ・ボザドも一緒だったが、彼も私と同じくあまりの恐怖に戦闘どころか逃げることすら出来なかった。私は此処で彼と一緒に巨人に食われて死んでしまうのだと諦めたその時だった。私の目の前に大きな白と青の翼を持った王子様が現れた。その王子様は目にも止まらぬ速さで、目の前にいる巨人を仕留めた。私は目の前の恐怖から開放され安心するあまり小便を漏らしてしまった。周りに女性は私一人だった為顔から火が出そうなくらい恥かしいと思ったが、一緒にいたオルオも小便を漏らしていた。その光景を見ていたリヴァイ兵長は顔を曇らせ私たちに背を向けて「済んだら、さっさと戻って来いよ」と言ってみんなの所へ戻って行った。その後、お互い顔を見合わせ「「絶対誰にも言わないでね(言うじゃねーぞっ)!」」と大声で言い、お互い見えない所で処理しようと移動しかけたところに、同期であるエルド・ジンが「二人とも大丈夫か!?」と慌てた様子でこちらに来てしまった為、エルドにも小便を漏らした事がバレてしまった。もちろん彼にも他言無用と釘を刺した。
二人とも用を済ました後、みんながいる所に戻って私は彼の姿を探し、さっきのお礼をしようと思ったが止めた。何故なら彼は潔癖症だからだ。タオルで拭いただけでは臭いまでは落とせない。例え、臭いがしなくても潔癖症の人がさっきの光景を見たら一発で嫌われるのは目に見えていた。だからこそ私は今此処でお礼をするのを躊躇した。
この日以来私の中でリヴァイ兵長が『人類最強の戦士』から『憧れ』に変わったと同時に私の『好きな人』になった。
そして今日、この時。リヴァイ兵長が私の直々の上官になったのだった。
私が兵長と一緒に任務につけるのはエレン・イェーガーの『監視』と『護衛』の為だとは言え素直に嬉しかったし、まだあの時のお礼が言えずじまいだったのが少し心苦しかった。この任務がいつまで続くかは分からないけれど、必ずこの任務中にまだ言えてない「ありがとう」を言うんだと心の奥で決意した任務開始前夜だった。
今回の任務には初陣の際共に小便を漏らしたオルオとその事を知っているエルドも一緒だった。あの事は2人ちゃんと釘を刺してあるから大丈夫だとして、問題はオルオ。最近のオルオはリヴァイ兵長に心酔している為、喋り方は勿論のこと髪型まで真似をしている。勿論喋り方は全然似ていない。似ていないからこそ腹が立つ。「リヴァイ兵長はそんな事言わないし、全然似てないわよ!」て、何度言ってもオルオは聞き耳を持たない。何よりリヴァイ兵長の方がオルオよりずっとカコイイ。の、だが彼は外見からはあまり想像がつかないが潔癖症である。その為『キレイ』が常である。そして今回エレンの監視の為使うことになった古城のような建物。かつては調査兵団の本部として使用されていたが、街から随分と離れた所にある為、物資の運搬に時間が掛かる等の悪条件が重なった為、随分前に市街地に近い場所に移転されてから使用されなくなっていた。勿論、人の出入りが無かったその古城の周りは草だらけだし、中もホコリだらけ。そしてこの班の班長は潔癖症な訳で任務初日の今日は朝からみんなで古城のお掃除。男性陣の3人は立体機動を使用して外から窓拭き。私は各部屋、エレンは地下牢の掃除。兵長はまだ掃除していない部屋の窓を順次開けて回っている。
私は今後兵長の部屋として使用される部屋を掃除することにした。この古城の外壁は煉瓦で出来ているが、建物の中は木造で、各部屋は色味の無い殺風景な部屋。私は部屋をぐるりと見渡すと、天井の端には蜘蛛の巣が張り巡らされ、床はホコリで真っ白。少しやる気が失せたが此処が兵長の部屋として使用されるのだということを再認識し気合を入れ直して掃除に取り掛かった。
いざ、気合を入れ掃除をするものの、あまりにも放置されていた為、汚れがなかなか落なかったり突然物陰からGが出てきたりと大波乱を呼んでいた。その為掃除する時間がいつもより倍の時間が掛かってしまった。掛かる時間が倍になれば、疲労も倍になる。だからと言って、今此処で休憩をしている暇はない。深い溜息を吐きながらも隣の部屋へ移動しようと廊下に出たら、隣の部屋から声がした。
「あのー、リヴァイ兵長。地下の掃除終わりました」
「あぁ そうか・・・・・・」
「・・・・・・あのっ!」
「何だ」
「その、俺はどこで寝たら良いんでしょうか?」
「お前は地下に決まっているだろ」
「えっ・・・・・・地下・・・・・・ですか?」
「あぁ、そうだ。そもそもこっちにお前の身柄を預かる条件でもあるしな。」
「はぁ・・・・・・」
「あとお前が寝ぼけて巨人化しても地下ならすぐに確保出来るしな」
「そう・・・・・・ですね」
「ともかく俺が確認してくるから、此処やってろ」
「はい、分かりました・・・・・・」
地下に向かう為兵長が部屋から出てきた所で、頭に白い頭巾をした兵長とすれ違った。それを横目で見ながら隣の部屋に入るとエレンがいた。エレンは少し戸惑ったような顔して部屋の中央に立ち尽くしていた彼に背後から声を掛けた。
「意外でしょ?」
「えっ?」
不意を突かれたのか、少し怯えた様子で振り返った。
「リヴァイ兵長よ。見かけによらずキレイ好きだし」
「みたいですね・・・・・・」
「街で噂されてるリヴァイ兵長とは違って少し幻滅しちゃった?」
「あっ、いえそうではなく・・・・・・その・・・・・・ちゃんとルールとか守る人なんだなって思って」
「確かに、そうね。昔は王都の地下街では有名なゴロツキだったみたいだし」
「そう、なんですか?」
「みたいよ。私も聞いた話だから詳しくは分からないのだけどね」
エレンは「へぇー、そうなんですか・・・・・・」とまだ少し緊張気味に返事を返してきた。
私は彼と喋っていて、目の前にいる普通の15歳の少年が巨人になるなんて想像もつかなかった。つかなかった分、実際に彼が巨人になって戦闘したら、人類にとって大きな要であることは間違いないとも確信した。だからこそ彼を私たちが全力で護衛しなければならないという大きな責任も芽生えた。
「おいっ!」
「「っ!!」」
掃除中に兵長の余談話をしていたら突然背後から本人の声が聞こえて、私たちは驚くあまり肩を上げた。
「はいっ!・・・・・・何ですか?」と恐る恐る声を発したのは、エレンだった。私は2人に挟まれる形で2人の会話を聞いた。
どうやら、さっきエレンが掃除した地下牢が兵長の目からはキレイでは無かったらしく、「もう一度やり直せっ!」と言われ彼は足早に地下牢へと戻って行ってしまった。その為、その部屋には私と兵長の2人だけとなってしまった。少し気まずかったが、「あの、兵長?」と声を掛けると「何だ、ペトラ」と返ってきたので兵長と少し話すことにした。
「えっーと・・・・・・その、ですね」
話すと決めたものの、いざ面と向かってあの時のお礼を言おうと思ったら急に恥ずかしくなってきて言葉に詰まってしまった。いつもならこんなことがないので、兵長も少し不思議そうな顔をしてこちらを見ていた。
沈黙が続き、心配したのか兵長が「おい、ペトラ・・・・・・どうした?」と声を掛けられてしまった。それに慌ててしまった私は、思わず「兵長っ!今日の夕食は何がいいですかっ?」と勢い良く聞いてしまった。まるで見当はずれの答えが返ってきたように驚いた顔をしたが、すぐにいつもの表情に戻って「何でもいい。ペトラ、お前に任せる」と返事が返ってきた。それに対し私は「そうですか、分かりました」と言って会話が終了した。
そして再び意をけしって、「兵長!」と呼び止めたところで、「リヴァイ兵長―!外の窓拭き終わりましたー」と建物の外からエルドの声がした。その声に彼は「分かった。今確認に行く」と返し、この部屋を出ていこうとした時、私の方に向き「話はもういいのか?」と尋ねられ「はい、大丈夫です」と少し肩を落として返事した。
私は折角のチャンスの逃してしまったことに、項垂れその場に座り込んでしまった。別に彼に愛の告白をするという訳ではなかったのに、まるでその時のような照れくさい緊張がはしって言い出せなかった。言えなかった悔しさのあまり自問自答という一人反省会を開き始めた。ひとりで「なんで言えなかったの?ただお礼を言うだけじゃないのっ!」と体を前後に揺さぶりながら独り言を呟いていたら、急に頭の上から声が降ってきた。顔を上げると目の前にオルオがいて、私を見下ろしていた。
「何やってだ、ペトラ。地べたなんかに座り込んで」
「っ!オルオこそっ!何、やってるのよ?」
「あぁ?俺は外の窓拭き終わって、自分の部屋がちゃんと掃除されたか見に来たんだよ。なんせ、掃除してたのはお前だからな」
「なっ!・・・・・・オルオに言われなくてもちゃんと掃除したわよ!」
「本当かぁ〜?」
「何よ!私の言ってることが信じられないの!?」
私は、オルオが言ったことに腹が立ち、つい大声の上げてしまった。その声を聞きつけたのかエルドが止めにはいってきた。
「おい、おい。また夫婦喧嘩か?本当お前ら懲りないよな」
「「誰が夫婦喧嘩よ(だ)っ!大体、こいつと夫婦だなんて御免よ(だ)っ!」」
「おい、お前らいい加減しろ!エレンがこっち見てるぞ」
エルドと同様に私の大声を聞きつけてきたグンタが、少し呆れた顔をして私たちに言った。私とオルオはほぼ同時に彼に目を向けた。彼は地下牢の掃除が終わったのか雑巾を持ったまま、廊下で困った顔をして立ち尽くしていた。彼は突然自分に視線を向けられドキっとした様子で、「えーっと、その・・・・・・お二人は仲がいいですね」と苦笑いで言った。その言葉に私は彼が何か誤解しているように思え、「ち、違うのよ。エレン!」と少々ムキになって話した為、彼にさらに誤解を与えるには十分のようだった。私は彼にきちんと弁解をしたかったが、今此処で何を言ってもさらに誤解されそうな気がしたので、これ以上弁解はしなかった。
私は頭の中を切り替えようと、髪の毛が乱れるくらい頭を左右に振り、前にいる男たちに「今日の夕食は何がいい?」と聞いた。男たちは少し悩んだ末、「何でもいい」「ペトラに任せる」と兵長と同じような返事が返ってきた。何故、男たちは「夕食何がいい?」と聞いたら「何でもいい」とか「お前に任せる」と答えるのだろうか。聞いているこっちは、その日何を作ろうか悩んでいるから聞いてるのに。それでは何の問題解決にはならない。そこで、私は役立たずの男たちの後ろにいる彼にも聞いてみた。
「エレン、あなたは今日の夕食何がいい?」
「えっ、俺ですか?」
彼はまさか自分も聞かれるとは予想してなかったのだろ。少し驚いた顔をし、少々考えた後「じゃぁ、スープがいいです」と申し訳ないような顔をして答えた。やっぱりエレンは彼らとは違うと思いながら「分かったわ」と笑って承諾した。
料理は実家に住んでた頃から母の手伝いでやっていたけれど、実際家族意外の人に食べてもらうのは初めてで、何よりも私は兵長の反応が気になるあまりそわそわして落ち着きがなかった。「兵長。スープのお味はどうですか?」と本当は聞きたかったが、「スープのお味はどう?」とエレンに聞くことにした。彼は少し笑い「すごく、美味しいです」と言ってくれた。それに続くかのように、男たちも「あぁ、具もたくさん入ってて、旨いぜ」と言ってくれた。私はその流れを利用して「兵長はどうですか?」と尋ねてみた。兵長はスプーンを持っていた手を止め、「・・・・・・不味くはない」と相変わらずの無表情で答えてくれた。「美味しい」とは直接言ってくださらなかったけれど、私は彼の「不味くはない」は彼なりの「美味しい」と意味なのでは、と思った。その根拠は、彼がエレンの様な食べ盛りの子どものように黙々と食べてくれているから。私は彼が少し満足そうに食べているのを少し離れた席から見ながら、自分の作ったスープを食べ始めた。
その後、私が作ったスープが余程美味しかったのか、食べ盛りであるエレンは何杯もおかわりをしていた。その様子を見ていた兵長が突然「おい、もうそれくらいにしとけ」と言い、またおかわりをしようとしていた彼を止めた。さらに兵長は「それ以上食ったら豚になるぞ。そうなったらお前はもう使いものにならない」とも言い放った。その言葉が響いたのか、彼はおかわりを止め、”ごちそうさま”をした。彼と同様に私たちもごちそうさまをし、私が食後のお茶を入れ、皆それを持って自室へと戻っていた。
私も部屋に戻り、お茶を飲みながらこれからのことを考えながらベッドに入った。
約一ヶ月後に控えている壁外調査のことが脳内を過ぎる。今回の壁外調査にはエルヴィン団長が新たに考案した陣形が使用されるのだという。その説明を受けたが、戦場では何時何処で何が起きるか分からない。しかも巨人という最大の敵がいる戦場では。私は何度も壁外調査に参加しているが、何度参加しても出発前は不安を抱く。それは今回初めて壁外調査に参加する彼も同じ。いや、私以上に不安なはず。先輩である私が何か不安を少しでも解消出来る言葉や行動をできればいいのだけれども、生憎私も何度参加しては、その度に仲間を失っている。そして今回もまた大事な仲間を失ってしまうのだろうかという不安もある。しかし今の人類には大きな要がある。がそれがどれだけの力があり、どれだけ持ちこたえることができるのか、何も分からないのもまた事実。毎日その力を確かめる為の実験や基礎トレーニングを重ねてはいるけれど、不安は相変わらず消えない日々。だけどそんな中分かった新たな事実。それは巨人になるためには“目的”が必要であること。目的なしでは力を発動出来ないらしい。とはいえ彼が巨人になる度、己の手の親指の付け根あたりを噛みちぎるのように噛むは相当痛い。彼はこれを、もう何度もしている。こんなにも痛い思いをしないと巨人化出来ないなんて、なんて力なの。私がもし、この力を持っていて必要だと言われても、彼ように戦おうとは思わないだろう。そこが私たちと彼の違いなのかもしれない。
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そして、一ヶ月後―――。第57回壁外調査が開始された。
今回の壁外調査で用いられる作戦はエルヴィン団長が考案した長距離索敵陣形が用いられている。私たちリヴァイ班のその陣形の中の最も安全な位置、中央後列を走って今回の作戦に参加。この作戦のメリットは生存率が以前より上がったことと、巨人との戦闘が少なくなったこと。だからと言って必ず巨人との戦闘がないわけじゃない。奇行種が現れれば戦闘は必須になる。例えそれが今までに見たことのない奇行種であっても。
今、私たちは絶賛女型の巨人に追いかけられ中。こんな形になる前に何度か黒の円弾は上がっていたけど、今回は戦闘せずとにかく馬で逃げる事が優先された。その理由は彼、エレン・イェーガーがいるから。だけど、私たちが戦闘しない分、仲間が戦闘し秒殺されていくことに変わりはない。私は仲間を見殺しにするのは辛いし、できればしたくない。だけどそうせざる負えないのは、さっきから走り続けてるこの巨大樹の森だから。森の中は巨人から身を隠すには最適だけど、戦闘となると人類側が不利。私たちは何度も兵長に戦闘するよう指示を仰ぐが、答えてくれなかった。混乱に陥っている私たちに兵長は音響弾を上げ、言った。
「お前らの仕事は何だ?その時々で感情に身を任せるだけか。そうじゃなかったはずだ。この班の使命は、そこのクソガキに傷ひとつ付けないよう尽くすことだ。命の限り・・・・・・。俺たちはこのまま馬で駆ける。いいな?」
私はその言葉を聞いてやっと今の任務のことを思い出し、「了解です!」と言って前に走り続けることにした。だけど新兵であるエレンは声を荒げ、戦う姿勢をやめなかった。そりゃ、私だって、仲間を見殺しにすることは耐え難い。だけど、今私に課せられた任務は『エレン・イェーガーを命の限り守り抜くこと』。だから、許して―――。と秒殺されてしまった仲間の方を見ようと顔を横に向けると、彼が自分の右手を噛もうとしていた。それに対し私が止めに入ったが、彼は自分で戦おうとした。その時兵長が再び口を開いた。
「お前は間違っていない・・・・・・。やりたきゃ、やれ。俺には分かる。コイツは本物の化物だ。巨人の力とは無関係にな・・・・・・」
「どんなに抑えつけようとも、どんな檻に閉じ込めようとも、コイツの意識を服従させることは、誰にも出来ない・・・・・・」
「エレン、お前と俺らの相違は経験則に基づくものだ。だがなそんなものはあてにしなくていい・・・・・・」
「選べ・・・・・・。自分を信じるか、俺あコイツら調査兵団組織を信じるかだ」
「俺には、分からない。すっとそうだ・・・・・・。自分の力を信じても、信頼に至る仲間を信じても、結果は誰にも分からなかった」
「だから、まぁ正是、悔いの残らない方を選べ・・・・・・」
それを聞くと、彼は自分の右手と後ろの女型とを見てから、彼は再び右手を噛もうとするが、私が「エレン!信じて!」とお願いするように言うと、後ろから再びひとり援護に来たのが分かった。
そして、彼が出した決断は「進みますっ!」と声を上げ、私たちを信じてくれた。その後援護班の1名も秒殺され、女型の巨人が一気に加速し距離を縮めた所で、突然「撃てぇぇ!!!!!」とエルヴィン団長の低い声が森に響き渡り、対特定目標拘束兵器が一斉に女型の巨人に向かい発射された。その後もリヴァイ班は「このまま走り続けて安全な所で待機してろ」と兵長に言われ、彼とは一旦別行動になった。その後私たちは馬で走り続け、橋を渡って少し行ったあたりで木の上に身を隠した。そこで私たちは今回の作戦の主旨が全員に伝えられてなかったことについて話した。確かにエレンのように新兵には今回の主旨が伝わらなくても、可笑しくないが、長く兵団に私たちにまで伝わらなかった理由が分からなかった。それについて指揮を任されたエルドによれば、私たちを信用していなかったのではなく、仲間に諜報員のようなヤツがいるのではないかと言う。そのことには納得した。今回の作戦の主旨が伝わっていたのは5年前から生き残っている兵だけ。もしこの組織に諜報員がいるとすれば、あの女型の巨人の中身ではないかという結論も出た所で、森の中央あたりから青の新円弾が確認された為、私たちは撤退の準備に入った。
まずは、帰りに備えてガスの補給をしてから、馬を待機させてある場所へと向かった。するとエルドが私たちの方を向き「オルオ、ペトラ。お前ら二人とも初陣で小便漏らして泣いてたくせに。立派になったもんだな!」とあれほど他言無用と釘を刺しておいたのに。しかも私たちのことを信頼してくれたエレンの前で、バラされてしまった。私は思わず声を荒げた。
「ぎゃぁぁぁぁー!!!!!!言うなよっ!!威厳とかなくなったらどーすんだよっ!エルド!!」
「えっ?」
声を荒げた後にエレンが少し減滅したような顔で私を見てきた。もう、これは絶対軽蔑されるんじゃないだろうか、とさっき大口叩いてた自分が恥ずかしくなった。さらにエルドは「事実だろ。ちなみ俺は漏らしてないからな、エレン」と自分は無実だとしっかりと付け加えた。これに対し「バカめっ!俺の方が討伐数とか実績は上なんだが!上なんだがっ!バーカっ!」とオルオも反撃したが、「討伐数だけでは兵士の優劣は語れない」とエルド言いくるめられてしまった。そして何か言いたそうにしていたエレンが私に「えっ、ペトラさん・・・。空中で撒き散らしたってことですか?!」と聞いてきた。私は彼の言葉を聞いて、あぁやっぱりちょっと減滅してるぅと思ったが、さっきの言葉を脳内でリピートしてみれば、彼は確かに「空中で」と言った。一体彼は私がどんな状況で撒き散らしたと思っているのだろうか。「さすがに空中ではない」と言い返したかったが、「いい加減にしろ!お前らピクニックに来てんのか?!壁外なんだぞここは!ちなみに俺も漏らしてないからな、エレン」と黙って聞いていたグンタに止められ、彼もしっかりと無実であると伝えた。
そうこうしていたら、遠くの方で緑の新円弾が上がったのが見えた。これを見て先頭を行っていたグンタが「きっとリヴァイ兵長からの連絡だ。兵長と合流するぞっ!続きは帰ってからやれ!」と釘を刺され、返事の合図を上げた。
そして私たちは兵長と合流すべく、兵長の元へと急いだ。するとグンタが突然「いや、違うっ!誰だ?!」と声を荒げた時グンタの前を何かが通るのが見えた。その後、グンタが宙釣りになった。それを不思議に思ったのかエレンがグンタに近づくと、うなじを斬られていた。その瞬間、緩んでいた緊張感が再び襲ってきた。エレンは戦死したグンタを気にしていたが、今は足を止めず本部に向かい報告することとエレンを守ることが最優先だ。けれど、私は目の前で仲間を殺され悔しくて「クッソ!よくもっ!掛かってこい!刺し違えてでも倒すっ!」と後ろから追いかけてくる脅威に嘆かるけと、木と木の間に身を隠したその直後女型の巨人が再度姿を現した。それを目の当たりにしたエレンが「今度こそ俺がやります!」と再び戦う姿勢を見せたが、エルドが「ダメだっ!俺たち3人が女型の巨人を仕留める。エレンはこのまま全速力で本部を目指せっ!」と命令を下さすが、戦う姿勢をやめなかった。それに苛立ったのか、オルオが「俺たちの腕を疑ってるのか?!」と聞いた為、私は「そうなの、エレン?私たちのことがそんなに信じられないの?」とさっきのこともありもう一度聞いた。するとエレンは加速し始め、「我が班の勝利を信じてますっ!ご武運をっ!」と言い私たちを信じてくた。彼を少し見届けた後、私たちは戦闘体制に入った。
まず最初にエルド女型の顔面に斬りかかると見せかけ、私とオルオが目潰しに掛かった。その勢いで、女型はうなじを抑えながら木に寄りかかった。目潰しをすれば、少なくとも1分間は暗黒の中。その間に必ず仕留めると心の中で意気込みを入れ直したところで、エルドが脇を削ぐよう合図した。その合図をお互い確認した後、エルドが最初に削ぎ始め、続けと私、オルオが削ぎ始めた。すると女型は腕を上げられなくなったのか、うなじを覆っていた腕を下ろした。そして後は首周りの筋肉を削げば、うなじが直接狙える。「今すぐそのうなじをっ・・・」と斬りかかったエルドが、女型の口で上半身を噛みちぎられた。
その光景を目の当たりにした私は戦場であることを忘れ、彼と同じように仲間の死に動揺してしまった。
「エルドォー!何でよ?まだ目が見えるわけがないっ!まだ三十秒もっ・・・・・・!」
「っ!!」
「片目・・・・・・だけ?」
「ペトラっ!早く体制を立て直せっ!!!」
「片目だけ優先して早く治したっ?!そんなことが・・・・・・そんなことが出来るなんてっ・・・・・・!」
「ペトラァァァっ!!!!!」
あれ?今オルオの声がしたような気がする。・・・・・・そうだ、ここは戦場。こんな上なんか見上げないでグンタとエルドを殺した女型を倒さなきゃ。・・・・・・って、何で?何で私の体、動かないの?何故?・・・・・・あぁ、そうか・・・・・・私、今さっき・・・・・・。女型に潰されたんだけ・・・・・・?何にしろ、オルオが仇を討ってくれる・・・・・・。きっと、そう・・・・・・。オルオなら、やれる。そう、信じてる・・・・・・。
そういえば・・・・・・、兵長に伝えられなかったな・・・・・・。あの時のお礼と自分の、気持ち・・・・・・。もし私が言ったら兵長・・・・・・、どんな顔するだろうか・・・・・・?やっぱり、困った顔・・・・・・?それとも、私が子どもだから・・・・・・、まともに、取り合ってくれない・・・・・・とか・・・・・・?兵長・・・・・・なら、ありえ・・・・・・る、よね・・・・・・。でも・・・・・・伝えるって・・・・・・すごく、大事・・・・・・だと、思う・・・・・・。伝えなきゃ・・・・・・伝わらない・・・・・・。だから・・・・・・ね、へいちょ・・・・・・。今・・・・・・届か、ない・・・・・・かも・・・・・・しれな・・・・・・いけど・・・・・・。
あ、の・・・・・・と、き・・・・・・助け・・・・・・て、下さ・・・・・・って・・・・・・あ、り・・・・・・がと・・・・・・ござい、ました・・・・・・。
それ・・・・・・と、もう・・・・・・ひとつ・・・・・・。
へいちょ・・・・・・、わた・・・・・・し・・・・・ずっと、好き・・・・・・だった、んです・・・・・・よ・・・・・・。へいちょ、の・・・・・・こと・・・・・・。
それ・・・・・・は、・・・・・・いま、も・・・・・・変わ・・・・・らず、すき・・・・・・で・・・・・・すよ、へいちょ・・・・・・。
もし・・・・・・ま、た生まれ・・・・・・変わって・・・・・・、へいちょ・・・・・・に、・・・・・・会え・・・・・・た、なら・・・・・・こん・・・・・・どは、ちゃん、と・・・・・・くち・・・・・・で、伝え・・・・・・に・・・・・・行き、ま・・・・・・す・・・・・・から・・・・・・。ま、待ってて・・・・・・くださ・・・・・・い、ね・・・・・・。
へい・・・・・・ちょ・・・・・・。あな・・・・・・たに、であ・・・・・・えて・・・・・・よか・・・・・・ったぁ・・・・・・。
ほん・・・・・・と・・・・・・に、こん・・・・・・ど、はぁ・・・・・・。く、ち・・・・・・で・・・・・・つた・・・・・・え、ます・・・・・・か、ら、ね・・・・・・。
へいちょ・・・・・・あい・・・・・・して・・・・・・ま、す・・・・・・。こ、れ・・・・・・か・・・・・・ら、も・・・・・・ず・・・・・・っと―――――。